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4月8日、RADWIMPSがYouTubeにて新曲『空窓』を発表した。読み方は野田洋次郎 (Vo.Gt.Piano)曰く“そらまど”……“くうそう”とも読めるがこのネーミングは意図的であり、どのように読んでもらっても構わないという。この曲の発表こそ突然であったが、制作過程などは野田洋次郎の公式Twitterより前々からアナウンスされていた。今回のコラムではこの曲を通じて少しだけあの日の事を回顧して行きたい。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。日本の観測史上最大規模とされ、この地震による死者・行方不明者は約18,500人にも及んだ。この大震災の発生から3日後にRADWIMPSの野田洋次郎は特設サイト『糸色-Itoshiki-』を立ち上げ、被災地へのメッセージと義援金を募り、翌年には突如新曲「白日」をYouTubeで発表。それからは5年間は3月11日になるとYouTubeで新曲を発表し続けた。昨年は野田洋次郎の中で3月11日に曲を出す事に疑問と葛藤を抱いていたようで新曲の発表こそ無かったが、あれから更に1年という月日を重ねて『糸色-Itoshiki-』は再び動き始めた。

野田洋次郎が自身のソロワークスであるillionで制作した1stアルバム『UBU』もそうなのだが、野田にとって『糸色-Itoshiki-』の曲とは震災を受けて沸々と溜まった混乱や怒り、哀しみを吐き出す捌け口のようなものだと僕は思ってる。だからこそそこに載せられた言葉はあまりに生々しく聴く者に刺さる。だがそんな言葉も年月を重ねる毎に響きを変えて行き2016年に「春灯」で1つの確かな幸福論に辿り着いたように思えた。

あれから2年。新曲『空窓』を聴いてみた。この曲が制作された背景に昨年休校となった福島県立浪江高校の最後の卒業生からの手紙があったという事もあり、視点がこれまで以上にノンフィクションに描かれている。《時が僕らを大きくするけど / 時は僕をあの場所から遠ざける》時間と共に風化していくあの震災の記憶を横目にしながら新しい日常を過ごし始めている“僕ら”のリアルな心情が映し出されている。震災に対する意識の風化。これが「空窓」に内在する一貫したテーマなのではないだろうか。とは言ってもそうして風化していく記憶を揶揄した曲では決してない。寧ろそうした想いで過ごしている人々にとってこの曲は救済になるかもしれない。「震災を決して風化させるな」とはよく聞くが風化させてあげた方が救いになる部分もきっとあると自分は思う。無論あの震災を経て学んだ教訓は次の世代へ繋いで行かなくてはいけないのだが……。

未曾有の東日本大震災から7年。まだ7年なのか、もう7年なのか。かつてRADWIMPSが歌っていた全てが幻だったのかもねと笑える未来が時間と共に近づいているのかもしれない。見方によればそれは風化と呼ばれるのかもしれないが、そこに背徳感を抱く必要はきっとない。《今日だけはこの蓋を開けてあなたに会いに行く》この曲を聴いてそう思えた方がいたなら、きっとそれがこの曲が生まれた意味に繋がるのだ(やまだ)


(RADWIMPS「空窓」Music Video)