今年の3月に筆者が横浜アリーナでRADWIMPSの『Human Bloom Tour 2017』を観させて頂いた時に確か「紛れもなくRADWIMPSのライブだったが全く別のバンドのライブに行ったような感触」と評した記憶がある。語弊があるかもしれないが決してマイナスな意ではない。圧倒的なスケールで展開される彼らのライブパフォーマンスを目の前にしたからこそ口から出た歓喜の言葉であった。昨日発売となったこの『Human Bloom Tour 2017』を観てそれは確信に変わり、逆説的だがこれまで彼らが出してきた作品の中で最もRADWIMPSという生命体が凝縮されている印象を受けた。

今作『Human Bloom Tour 2017』ではRADWIMPSが2月からスタートさせたツアーから、4月30日のさいたまスーパーアリーナ公演の模様を中心に収録し、更に彼らにとって初の試みでもあるライブアルバムが封入されている。

映像に収められているのはまさに現在進行形で進化し続けるRADWIMPSの姿。バンドとオーディエンスが一体となった爆発的なライブを圧倒的な映像美で堪能する事ができる。ツインドラムという武器を完全に物にした卓越したアンサンブルに加え、美しく光る演出の数々。彼らにとって大躍進の1年となった昨年に発表された『君の名は。』『人間開花』という2枚のアルバムで提示した煌びやかさをそのまま体現したライブツアーになっている。

思い返せばRADWIMPSがこの新境地を開拓するまでの道のりは決して楽なものではなかった。2015年というバンドがメジャーデビュー10周年を迎えるアニバーサリーイヤーで無情にも彼らを襲ったドラマー山口智史の無期限活動休止。バンド存続の危機に直面しながりもサポートメンバーを導入。RADWIMPSという生命体が息絶えないように死に物狂いでバンドの根本的な部分から向き合い、命の火を灯し続けた。こうした想像を絶するような絶望を味わった彼らだからこそ、この輝かしい瞬間を生み出す事ができたのだと思う。光を求めて迷い続けたRADWIMPSは自らが光源となる事で見事な開花を成し遂げた。『Human Bloom Tour 2017』はその紆余曲折の結晶だ。

ライブのMCで野田洋次郎(Vo.Gt.Key.)は「俺らの一生をここに全部遺していく」と言った。その言葉に偽りはない。筆者が知っているRADWIMPSの全部が惜しげも無く詰まっていた。そして野田がファンと交わした約束の種はこの先の未来に向かって既に芽生え始めているのかもしれない。あなたの目で、耳で、是非ともそれを感じ取って頂きたいと思う(やまだ)


(「Human Bloom Tour 2017」Digest)